人気ブログランキング | 話題のタグを見る

君に届け

本当は50代の爺さまが見ても目の毒でしかないのですが、子どもと一緒に見ているうちにすっかりハマってしまった「君に届け」、素晴らしいです。そもそも今頃話題にするのもおこがましいほど中途半端に古い作品なのですが、そこはアニマックスなのでオッケーです。内気で妄想好きだけど実は結構美人で女子力も高い女の子黒沼と、ひたすら爽やかで好青年な男の子風早との恋。そこには青春のキラキラもドキドキも不安もすべてが詰まっています。主人公たちのもどかしささえも懐かしく、気がつくと高校生の頃に引き戻されている。なんとありがたい時間でしょうか。



僕たちくらいの歳になると、ほとんどのつらい過去も夜中に飛び起きて叫びたくなるような恥ずかしい過去も概ね浄化され、美しく幸せな記憶にすり替わっており、恥ずかしげもなく自らを主人公風早に重ねることができる。あんなこともこんなことも、今ではもう忘却の彼方。てゆうか、細かいところはそれが僕に訪れた事実だったのか、誰か他人の記憶なのかもよくわからないんですよね。アラウンド60ティと呼ばれる年齢に近づいてあらためて思うんですが、爺さまに必要なものは高価な車でも時計でもなく、ましてや愛人でもワン公でもない。ただ若く浮かれた日々の記憶、、雨上がりの校庭の匂い、油の染み込んだ廊下の感触、教室で揺れていたカーテンと青い空と女の子の白い夏服。そしてぎこちなく不器用な恋のこと。そういう断片だけで、残りの人生を生きていける。人生は移動遊園地と書いたのはヘミングウェイですが、そう、青春の思い出は一生ついて回り、残りの人生を死ぬことの恐怖から少しの間遠ざけてくれる。「君に届け」は、夢を見ることを忘れた爺さまにこそ必要な物語なんですよね。
by melody63 | 2019-05-20 03:12 | Diary

Isn't It Romantic?


by melody63