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OUR DAYS

先日いろいろあって引退を発表された某先生とその最盛期に仕事で関わらせていただいた一人として思うんですが、「我が世の春」って言葉は、まさにこの人のための言葉だったなぁと。どこまでも傍若無人でハチャメチャで子どものように強引で桁外れの女好き。かのローマ帝国の皇帝さえここまでは、みたいな。まぁでも本当に楽しかったです。ありがとうございました。



スタジオのロビーでは毎日のようにレコード会社や芸能プロの重鎮、テレビ局の編成や営業、その他広告代理店など有象無象の組織に属する男たちが先生の言葉に一喜一憂し、土下座したり泣きわめいたり床に這いつくばったり、一方ソファで細い足を組む先生の両側にはいつもいい匂いのする現実離れした女の子たちが上目遣いで侍り、まさに天国と地獄の様相を呈していた。その神々しいまでの「春」は先生の才能一点のみによって醸成され、その才能が枯渇したときに春は跡形もなく潰え去ってしまう。明けない夜はないと言いますが、暮れない昼もまたないわけで、当時僕達の誰もが信じていなかったけど、永遠と思われたパクス・ロマーナさながら、時代はその間にも刻々と移り変わっていたのでした。

先日の会見はこれ以上ないほどのテンションの低さと顔色の悪さ、そして極めつけの「引退」というキラーワードで世論を味方につけましたが、背負っているものがまだまだ多い中での引退とはずいぶんと思い切ったものだなと。介護疲れ、というのは当てはまらない気がする。本人の病気や老いも、それはそれで仕方がないことであり、お金で問題を棚上げすることもできた。真実はもっと別の所にあるようにも思うけど、ただ復帰後、明確な数字が積み上がらなかった、というのも要因の一つだったように感じます。数字がすべての世界で成り上がってきた人なので、数字以外に慰めがあると思えない。街の声やらtwitterで引退を惜しむ人は大勢いたけど、そうした人達の中で、ここ数年先生がどんな仕事に関わってきたか、どんな楽曲を書いてきたかを知る人はどれほどいただろうか。ワイドショーで街頭で聞くベスト10とかやってましたけど、そのすべてが20年も前の曲でした。ここ数年で1枚でもヒット曲が出ていたら、たぶん違った展開もあったと思う。でもそうはならず、足元をすくわれ裏口からの退場を余儀なくされた。いい加減な人達の常套句のように、人生いろいろありますよね、とかそんな言葉しか出てこない。60歳って確かに微妙。自営業やアーティストに定年はないけど、人はそんなに長く一つの仕事を続けられるものなのか。期待と失望を背負っての極度の緊張感の中で、最善と呼べるレベルの仕事を一体いつまで続けていけるものなのか。強く輝いてしまった分、あとに残る闇は深く暗いものなので。

by melody63 | 2018-01-24 13:32 | Diary

Isn't It Romantic?


by melody63